フィギュアスケート

羽生結弦は4回転半挑戦!アクセルジャンプが難しい理由は半周多いだけじゃない

2022年2月7日

羽生結弦選手はクワドアクセルといわれる4回転半のアクセルジャンプに挑戦しています。この人類未踏の領域に羽生選手が到達できるのか否か、北京オリンピックでの演技に注目が集まっていますね。ところで、近年フィギュアスケート界では男女シングルともに4回転ジャンパーが急増しています。その4回転ジャンプの中でも最難関とされるのが4回転アクセルです。

では、アクセルジャンプとは他のジャンプと比較して具体的にどのような点が難しいのでしょうか?フィギュアスケート経験者の言葉をもとにアクセルジャンプの難しさをご紹介します。


羽生結弦は4回転に挑戦!アクセルジャンプとはどんなジャンプ?

日本人ならフィギュアスケートに詳しくなくても「トリプルアクセル」という技名を知っている人も多いことでしょう。

トリプルアクセルとは、トリプル=3回転のアクセルジャンプのことです。

日本女子スケーターのパイオニア、伊藤みどりさんはトリプルアクセルを武器にアルベールビルオリンピックで銀メダルを獲得しましたし、浅田真央さんも、バンクーバーオリンピックでショートとフリー合計で3本のトリプルアクセルを成功させ、銀メダルを獲得しました。

このようにトリプルアクセルとは我々日本人にとって親しみのある高難度ジャンプです。

ではアクセルジャンプとはどのようなジャンプなのでしょうか。

上の動画の通り、前を向いて踏切り、後ろ向きに着氷するのがアクセルジャンプです。

その他のジャンプはすべて後ろ向きで踏切り、後ろ向きに着氷するので、前向き踏切りのアクセルジャンプは他のジャンプよりも半回転多く回転することになります。

そのアクセルジャンプの中でも、現在羽生結弦選手は4回転アクセルジャンプ(クワドアクセル)に挑戦しています。

近年男子シングルでは4回転ジャンプを跳ぶ選手が急増し、試合では4回転ジャンプの種類の多さ、本数の多さが勝負を分ける時代です(女子もその傾向が現れてきています)。

しかし、そんな4回転ジャンプ激戦時代においても、いまだかつて4回転アクセルに成功した選手は皆無です。

現在人類が跳べる最難関ジャンプは4回転ルッツ

現在人類が成功している最も難易度の高いジャンプは4回転ルッツというジャンプです。

動画のように、ルッツジャンプは後ろ向きで踏み切るのですが、踏み切るときに重心を靴のブレード(刃)の外側のエッジに乗せるため、助走のときに本来の軌道とは一旦それるような流れを描かなければならず、このジャンプを4回転で回るのは非常に難しいとされています。

この4回転ルッツはネイサン・チェン選手やヴィンセント・ジョウ選手、女子のアレクサンドラ・トゥルソワ選手など限られた選手にしか跳ぶことができません。

羽生選手も4回転ルッツを成功させている一人ですが、羽生選手でもコンスタントに試合に組み込むことが難しいリスクの高いジャンプです。


関連記事:【2021-2022】女子フィギュアで4回転ジャンプを跳べる選手まとめ

アクセルジャンプはなぜ難しい?

アクセルジャンプの難しさについてさらに深く見ていきましょう。

前向きに踏み切り半回転多く回るジャンプであることは先ほど述べましたが、それがどのくらい難しいことなのか、フィギュアスケート経験者のコメントも交えて紹介します。

半回転多いことの難しさ

回転が多くなると難易度が上がるというのは、素人感覚でもなんとなく理解できますよね。

とはいえ、氷上であれだけハイスピードで回転するフィギュアスケートのジャンプですから、半回転増やすことの難しさは分かるような分からないような。

回転数を増やす。とりわけ3回転から4回転に増やすために必要な対応方法を選手たちはこのように語っています。

まずは高橋大輔選手の発言です。

『体の締め方は、3回転も4回転もそんなに変わりません。でも、4回転は3回転より遠心力がきつくなるから、持って行かれそうになる体を保てるか、回っているうちに緩んでくる腕を持ちこたえられるか、などといった点がポイントになります。』

回転数が増えると、回転時にかかる遠心力が大きくなるため、それに耐えうる空中姿勢や体幹の強さが必要になります。

いっぽう小塚崇彦さんは

(羽生選手の試合結果の解説より)『フリーの結果は心配していない。4回転の練習をしてると思うので、3回転と4回転の体の締め方が違うからだと思う。次はしっかり対応してくるでしょう』

同じ種類のジャンプでも回転数が異なれば体の締め方(空中でのフォーム)が異なるという意味の発言をしています。

以下の動画がわかりやすいかと思います。

ネイサン・チェン選手の3回転ルッツと4回転ルッツを比較した動画です。空中姿勢が全く違いますよね。4回転の方がより脇を締めて上半身をコンパクトにまとめています。

このように選手によって感覚に違いがあるとはいえ、ジャンプの回転数を増やすためには特別な対応が必要であるという点は共通しています。4回転ジャンプと3回転ジャンプは回転数を増やすためには遠心力の変化、体の締め方はもちろん、多く回りきるためにジャンプの高さ、幅、助走スピードなど様々な点に対応しなければなりません。つまり1回転増やすとジャンプは別物になるという感覚なのかもしれませんね。

とりわけアクセルジャンプはトリプルジャンプでさえ他のジャンプよりも多く回らなければいけないジャンプです。他の3回転ジャンプと同じような感覚で跳ぶことはできません。トリプルアクセルの名手である紀平梨花選手は、指のケガをした際には指先の空気抵抗が変わってしまいトリプルアクセルの跳び方を見直したという経験もあります。これくらいシビアなジャンプですから、3回転半を4回転半に増やすことはいかに難しいチャレンジであるかが分かりますよね。

前向きに踏み切ることの難しさ

アクセルジャンプは唯一前向きに踏み切るジャンプでしたね。

私のような素人ですと、後ろ向きで進行方向が見えないまま踏み切るよりも、前を向いてジャンプするほうが恐怖心は少ないのでは?と考えてしまいます。

ですが、フィギュアスケートに関しては全く真逆のようです。

ネイサン・チェン選手

『僕でも3Aは苦労している。いろんなジャンプがあって前向きに跳ぶのがアクセルだけ。後ろ向きに踏み切るほうが怖いという人もいるけど、僕は前向きが怖い。自分が向かっている先が見えて、凄く正確に跳ばないといけない。氷をブレードでどう押して、どう持って行き、どう止めるか、それによって空中に飛び上がるんだ。後ろ向きで踏み切るジャンプは、氷に足を押し付けるか、カーブを付けてエッジで氷を削るか。前向きは気をつけないと失敗しやすい。』

ネイサン選手の場合は、前向きだと進行方向が見えるぶん、考えることも増えるため、ナーバスになるようです。

関連記事:羽生結弦に勝てるネイサン・チェンはどこがすごい?強い理由とは?

本田武史さん

『滑っている動作があるので前に体重をかけることが難しい。アクセルジャンプは前に滑って足を振り上げる。どうしても前向きに行くので、恐怖心のために縮こまってしまうこともある。』

佐藤信夫コーチ

『大急ぎで歩いていて、足が何かに引っかかったら体が前に飛んでいくようになるでしょう。あの状態で空中でクルッと回れば、アクセルになるわけです』

本田武史さんと佐藤信夫コーチの発言をまとめると、スケートを滑るときに前重心になってしまうと前方へ転んでしまうため、通常であれば前に体重がかからないようにするのが普通ですが、アクセルジャンプに関しては、前向きでスピードをつけて助走をしたうえで、さらに前に体を投げ出すように踏み切るため、自ら危険に身をさらす感覚に陥るようです。

選手によっては、”前方の見えない壁に体をぶつけに行く”と表現する人もいます。

このような恐怖心を乗り越えて思い切り跳ばないとアクセルジャンプを成功させることはできません。

現在トリプルアクセルは、トップレベルの男子選手には当たり前に、そして女子選手でも導入するトップレベルの選手は増えてきていますし、4回転ジャンプと比較するとインパクトに欠けると思われがちですが、実はトリプルアクセルを成功させるというのは決して当たり前ではなく、ものすごいことなのです。


関連記事:【2021-2022】女子フィギュアでトリプルアクセルを跳べる選手まとめ

4回転ジャンプが跳べてもトリプルアクセルが跳べない選手もいる

他のジャンプと比べて、跳び方が根本的に異なるトリプルアクセルですが、優れた4回転ジャンパーの中にも苦手意識を持つ選手が少なくないようです。

4回転ジャンプとトリプルアクセルの難易度を単純比較することはできませんが、一部の選手は以下のように語っています。

ダニエル・グラスル選手

『5回転に挑戦するのは怖くない。5回転より4Aに挑戦する方がもっと怖いと。』

ダニエル・グラスル選手はトリプルアクセルを跳べるのはもちろん、現状最高難度の4回転ルッツを跳べる期待のジャンパーです。

そんな彼でも、クワドアクセルへの挑戦は避け、5回転ジャンプの習得を目指しています。


女子屈指の4回転ジャンパーであるアレクサンドラ・トゥルソワ選手も、トリプルアクセルを跳べるのですが、成功率は4回転ルッツよりも劣りますし、本人もトリプルアクセルの方が苦手という発言をしています。

関連記事:羽生結弦がトゥルソワら4回転女子を語り謙虚さを称賛される

このようにジャンプの才能のある選手でも、トリプルアクセルが苦手な選手は珍しくありません。

ちなみに近年4回転ジャンパーが急増しているロシアの女子選手でも、4回転は跳べるのにトリプルアクセルは跳べないという選手は複数存在します(そんななか4回転もトリプルアクセルも両手を上げてさらりと跳ぶワリエワ選手は異次元ですが…)。

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羽生結弦が4Aの難しさをアレに例えると…

ここまでアクセルジャンプ(とくにトリプルアクセル)の難しさについて語ってきましたが、羽生結弦選手はそんなトリプルアクセルが大得意です。

羽生選手はまさにお手本のような理想的なトリプルアクセルが跳べるのですが、そんな羽生選手でも苦労しているのがクワドアクセルです。

羽生結弦選手はピョンチャンオリンピック帰国後の外国特派員協会での記者会見で、クワドアクセルの難しさをこのように例えています。

『4回転半は、2回転しながら4重飛びをする感じ。5回転は、3回転しながら5重飛びをするような感じです』

・・・・・つまり異次元の難しさということですね。凡人には想像もできない世界です。

それにクワドアクセルになるとケガのリスクも急激に高まるでしょうし、練習の1本1本のジャンプにも非常に神経を使うのではないでしょうか。

羽生結弦が4回転アクセルに成功したら大偉業!技名は”ユクセル”に?!

フィギュアスケートの技の中でも特別なアクセルジャンプ。羽生結弦選手が北京オリンピックの場でクワドアクセルを成功させられるでしょうか?昨年末の全日本選手権では、両足着氷のダウングレード(1/2以上の回転不足)判定で、あともう一歩というところでした(とはいえ転倒しなかっただけでもスゴイこと)。

もし北京オリンピックで成功できれば、それはまさにフィギュアスケート界、いやスポーツ界の大偉業です。

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ちなみにロシアのフィギュアスケートファン界隈では、4回転アクセルをユクセル(ユヅル✕アクセルの造語)と呼ぶ人もいるとか。もちろん正式名称はアクセルなのですが、ユヅルという名前がついていいくらいの大技であることには間違いありません。

羽生結弦選手の4回転アクセル成功を祈ります。

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