2020年5月25日、アメリカ・ミネソタ州で黒人男性のジョージ・フロイドさんが、警察官に膝で首や背中を押さえつけられ死亡しました。
この事件を発端に、現在アメリカ各地で抗議デモが起き、SNSでも著名人やアメリカ国民以外の人々が抗議の声を上げています。
みなさんもニュースでデモの映像を見たり、SNSで関連する情報を見ていることと思います。
そこで「Black Lives Matter(#BlackLivesMatter)」というスローガンをよく目にするのではないでしょうか。
このBlack Lives Matterにはどのような意味が込められているのでしょうか?
ジョージ・フロイド事件の合言葉「Black Lives Matter」
Embed from Getty Imagesジョージ・フロイドさんが警察官に不当に殺害された事件によって発生した黒人差別抗議デモ。
人々はジョージさんが警察官に押さえつけられていた際に叫んでいた「I can't breath(息ができない)」という言葉や、「Black Lives Matter」という言葉などを記したボードを掲げてデモに参加しています。
SNSでも今回の抗議運動に関連する投稿には#BlackLivesMatterというタグを付けるのが定番になっています。
Black Lives Matter=黒人の命は重要
「Black Lives Matter」を直訳すると”黒人の命は重要”という意味になります。
「黒人の命」という人種を特定した言い回しに違和感を持つ人もいるかもしれませんが、ここで言う「黒人の命は重要」の意図は黒人の命”だけが特別”重要ということではなく、黒人の命も”(白人と)同じように”重要だと言うことです。
これは黒人差別撤廃デモのスローガンでもあり、人権運動そのものを指す名称になっています(Black Lives Matter運動=通称”BLM運動”)
ではこのフレーズがこれほど広まった背景には何があったのでしょうか?
Black Lives Matterが広まったキッカケはトレイボン・マーティン事件
Black Lives Matterというスローガンが広まったキッカケは2012年に起きたトレイボン・マーティン射殺事件です。
この事件は2012年2月26日、フロリダのサンフォードで、住宅街を歩いていただけの17歳の黒人少年、トレイボン・マーティンが、近所の自警団員だったヒスパニック系のジョージ・ジマーマンに射殺されたという事件です。
罪のないの少年を射殺した犯人の動機は日頃抱いていた黒人への偏見によるものでしたが、殺人の罪に問われたジマーマンは裁判で正当防衛が認められ無罪となりました。
この理不尽な判決に怒った国民たちは、全米各地で抗議のアクションを起こしたのですが、その一つがSNSでの#BlackLivesMatterハッシュタグの拡散でした。
トレイボン・マーティン事件後も、2014年7月にニューヨークでエリック・ガーナーという黒人男性が逮捕時に白人警官に必要以上に押さえつけられ窒息死する事件が起こりました。
またその翌月の8月には、ミズーリ州ファーガソンで18歳のマイケル・ブラウンという黒人少年が友人たちとコンビニから自宅へ帰る途中に警官と言い合いになり、もみ合いとなったことろ白人警官によって射殺されるという事件が起こりました。
これらの立て続けに起こった黒人の不当な犠牲により、Black Lives Matterというスローガンはまたたく間に全米へと浸透し、MBLというムーブメントに発展していきました。
繰り返されるMBL運動
2012年のトレイボン・マーティン事件から8年が経過しようとしているいま、同じような事件が繰り返されています。2020年に限っても理不尽に殺害されたのはジョージ・フロイドさんだけではありません。
もちろん黒人への不当な暴力は8年前に始まったわけではありません。
例えば1992年のロドニー・キング事件や、さらに遡れば1965年の血の日曜日事件などもそうです。
アメリカにおける黒人差別という点では、黒人たちが奴隷としてアフリカ大陸から連れて来られた17世紀から歴史をなぞっていく必要があります。
現在世界的ムーブメントとなっている#BlackLivesMatteですが、一過性のものでも、コロナ禍の不満のはけ口でもなく、アメリカ社会においてはタンポポの根のようにいつの日も深く太く根付いている問題であるということを理解しておきたいですね。
関連:アメリカの人種差別を理解するために見ておきたいオススメの映画