ロシアのフィギュアスケート女子選手といえば競合揃いですが、
中でも現在最も恐れられている存在がアレクサンドラ・トゥルソワ選手です。
4回転ジャンプをバンバン跳ぶ天才少女として日本のテレビ番組でも取り上げられている彼女ですが、
2019-2020シーズンからシニア女子に参戦した彼女は、
しばらく女子フィギュアスケートを牽引していく存在になると言われています。
そんなトゥルソワ選手は日本のフィギュアスケートファンから「トゥルソワ先輩」と呼ばれるほどリスペクトされているんです。
今日はトゥルソワ選手の強さや弱点について、フィギュアスケートライトファンの目線で語っていきたいと思います。
まさに規格外!アレクサンドラ・トゥルソワの”史上初”の歴史
アレクサンドラ・トゥルソワ選手は2019年10月現在15歳。
今シーズンから本格的にシニア女子部門に参戦します。
そんなトゥルソワ選手の経歴を早速ご紹介しようと思うのですが、
〇〇の試合で何位とツラツラと書き連ねても伝わりにくいので、
彼女の史上初の記録のみご紹介して経歴を振り返ろうと思います。
トゥルソワ選手の史上初の歴史は以下の通り
- 女子初4回転トゥループ成功
- 女子初4回転ルッツ成功
- 女子初同プログラム中に2回の4回転ジャンプ成功
4回転ルッツというのは、4回転アクセル(前人未到)の次に難しいジャンプと言われています。
この4回転ルッツは羽生結弦選手も跳べるのですが、このジャンプでケガをしたこともあり非常に難しいジャンプなんです。
ちなみにトゥルソワ選手は3種類の4回転ジャンプが跳べます。実は一種類だけは史上初ではないんですね。
それは4回転サルコウ。
そう、安藤美姫さんが女子で初めて成功したジャンプです。
安藤さん、ただのお騒がせタレントではないんですよ!
(追記:この記事を書いたあともトゥルソワ選手の”史上初”は続いています)
- 女子初同プログラム中に3本の4回転ジャンプ成功
- 女子初プログラム後半に4T-1Eu-3Sの3連続ジャンプ成功
- 女子初フリーで技術点100超え
- 女子初4回転フリップ成功
続いてはスコアの史上初、つまり世界記録を見ていきましょう。
女子シングルジュニアクラスフリースケーティング世界最高得点(153.49) - 2018年世界ジュニアフィギュアスケート選手権
女子シングルジュニアクラストータルスコア世界最高得点(225.52) - 2018年世界ジュニアフィギュアスケート選手権
女子シングルフリースケーティング技術点世界最高得点(92.35) - 2018年世界ジュニアフィギュアスケート選手権
女子シングルフリースケーティング世界最高得点(163.78) - 2019年CSネペラ記念
女子シングルトータルスコア世界最高得点(238.69) - 2019年CSネペラ記念
引用元: https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AC%E3%82%AF%E3%82%B5%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%A9%E3%83%BB%E3%83%88%E3%82%A5%E3%83%AB%E3%82%BD%E3%83%AF
2018年~2019年にかけてバンバン記録を打ち立てていますね。
そう、お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、
トゥルソワ選手、シニア女子に参戦して早々に世界記録を樹立しているんです。
通常フィギュアスケートという競技はシーズン序盤は肩慣らしで、
シーズン後半にかけてスコアを伸ばしていくのが流れなのですが、
トゥルソワ選手はまだ大きな大会が始まる前から記録を作っちゃったんですね。
これがいかにスゴイことか…
五輪女王のザギトワ選手や3Aの紀平梨花選手をあっさり超えちゃったということですよ。
しかしこの衝撃は序章に過ぎないかもしれません・・・。
トゥルソワの強みはやっぱり
トゥルソワ選手の強みといえばなんと言ってもジャンプ。
4回転ジャンプを実戦で跳べる女子選手はほんの一握りです。
関連:(最新)女子フィギュアスケートで4回転を跳べる選手一覧
そのなかでもトゥルソワ選手は複数種類のジャンプを一つのプログラムに入れられる最強の構成を持つ選手です。
多くの女子選手は3回転-3回転のコンビネーションを勝負技にしています。
しかし、その点数は単独の4回転ジャンプとほぼ同じかそれ以下なんです。
つまりトゥルソワ選手が4回転を複数跳んだら、
他の選手が技術点で上回ることは至難の業(というかありえない)となります。
たとえトゥルソワ選手が4回転を1本転倒しても、他の4回転や3回転-3回転のコンビネーションを決めれば余裕ですよね(ちなみにトゥルソワ選手は3Lz-3Loという激ムズのコンビネーションを跳びます)。
そんなトゥルソワ選手に勝つために、
現在のトップレベルの各国の選手たちも3Aや4回転ジャンプ習得を目指して頑張っていますが、
いざ成功しても実戦で安定して跳ぶのにはまたさらに時間を要します。
そんな中でもトゥルソワ選手は着々とジャンプの成功率と質を上げていっていますから、しばらくはトゥルソワ選手の時代が続きそうです。
トゥルソワの弱点はありそうで無い?
トゥルソワ選手はジャンプが強みなのは誰もが知るところですが、では弱点は?
フィギュアスケートはジャンプの他にも
スピンやステップ、スケーティング技術、表現など色々な要素で採点されます。
それらについてですが、
トゥルソワ選手はスピン・ステップについては得意とは言わないまでも最高レベルのレベル4が取れる実力はあります。
そしてスケーティングも流れがあり上手です。(本人はスピン、スケーティングが嫌いなんですって)
明らかな弱点としてあげられるのは表現力ではないでしょうか。
ジャンプの印象ばかりが強くて、
プログラムの印象が残らないのは彼女の”伝える力”不足であるとも言えると思います。
ですが、エテリコーチのチームはそのへんのマネージメントが上手で、
表現力の乏しい選手にはそれが目立たないプログラムで対策してきます。
それにバレエなどの陸上トレーニングもみっちりと行うチームなので、トゥルソワ選手の今後の伸びしろは大きいと見ています。
まとめるとスピンやスケーティングはトップ選手の中ではそこそこで
表現力が未熟ではあるのですが、ジャンプのアドバンテージが大きすぎるため、
弱点が彼女の足を引っ張るという程のものでも無いということです。
日本のエース紀平梨花はトゥルソワとガチで戦ったら勝てるのか?
今の所スキのない選手に思えるトゥルソワ選手。
私たち日本人として気になるのはやはり、
日本のエース紀平梨花選手がトゥルソワ選手に勝てるのかどうか?
ということですよね。
紀平選手の現時点のフリースケーティングの演技構成には、
単独のトリプルアクセルと、トリプルアクセルのコンビネーション、
3Lz-3Tの高難度のコンビネーションが含まれています。
この内容は女子シニアの中でも超ハイレベルです。
が、しかしジャンプを含む技術点の勝負ではトゥルソワ選手にはかないません。
紀平選手はジャンプ意外の要素や表現力においても穴のない選手なので、
演技構成点ではトゥルソワ選手を上回れると思いますが、
それでも合計スコアはトゥルソワ選手が有利でしょう。
しかし、紀平選手は現在4回転ジャンプを試合で組み込もうとしています。
今シーズンに4回転ジャンプを構成に組み込めたのなら、
お互いノーミスの場合でも、紀平選手が勝てる可能性がグンと高まるのではないでしょうか。
トゥルソワのピークはいつまで?成長期が来たらどうなる?
4回転を含む高難度ジャンパーの女子選手のネックが成長期です。
ほんの1cmでも身長が伸びただけでジャンプの重心が狂うという世界ですから、
年間数センチから10cm近く身長が伸びる成長期を乗り越えられるかどうかが
その選手の運命を分けると言っても過言ではありません。
安藤美姫さんもジュニアの頃に跳べた4回転サルコウをシニアで跳ぶことはできませんでした。
ではトゥルソワ選手はというと、
華奢ですしまだ大人の女性の体型ではありませんね。
脂肪の付き方を見ても成長期がくるまでもう少し時間がありそうです。
ちなみにロシア人選手の成長期は「ロシアンタイマー」と言われるぐらい大きく成長することで知られています。
日本でも人気だったリプニツカヤさんもピーク時はトゥルソワ選手のような華奢な体型でしたが、ロシアンタイマーが発動して以降、すっかり女性の体型となり、心身ともに体調を崩し引退に追い込まれました。
そんなロシアンタイマーがトゥルソワ選手に作動したら・・・
現在のようなジャンプの構成は不可能になるのではないか?と考えられています。
その時期がいつなのかは神のみぞ知るところですが、
ポイントとなるのが2022年の北京オリンピックですよね。
あと3年今の体型のままではいかないでしょうし、
さらに下の世代が4回転や3アクセルを習得してきていますから、
この3年間で女子フィギュアスケートの勢力図は大きく変わる可能性もあります。
関連:羽生結弦が4回転を跳ぶロシア女子選手たちに言及した内容は?
エテリコーチの元で成長期を乗り越えられる?
成長期は女子選手にとってありがたく無いものかもしれません。
しかし、成長期を乗り越えてトップに返り咲いた選手がいるのも事実です。
たとえばエリザベータ・トゥクタミシェワ選手は
ロシアンタイマーを乗り越えたのち、
トリプルアクセルを習得して世界女王に輝きました。
また平昌オリンピックで絶好調だったザギトワ選手は
次のシーズン前半、成長期で不調に陥ったのですが、
シーズンを通して成長する体と向き合った結果、
最後の世界選手権で世界女王の座を射止めました。
トゥルソワ選手もこのような成功例に続いてほしいですね。
トゥルソワ選手とザギトワ選手のコーチ、エテリ・トゥトベリーゼ氏は
以前は幼い女子選手の育成(だけ)に長けたコーチだと考えられていました。
しかし、ザギトワ選手の成功例から、
「女子選手の技術を衰えさせずに成長期を乗り越えるノウハウ」を習得した可能性があります。
前例があるという点ではトゥルソワ選手も心強いのではないでしょうか。
ザギトワ選手は4回転ジャンパーではないので
ハードルの高さは違うかもしれないけれど、
ザギトワ選手以上の才能のあるトゥルソワ選手ですから、
コーチ陣も万全の体制で彼女をフォローするものと考えられます。
彼女の成功はチームの願いでしょうからね。
とはいっても、彼女の下にはぞくぞくと才能ある少女が待ち構えているっていう。
その話はまたいつか・・・
あぁおそロシア~。