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ワリエワも使い捨て?エテリコーチから移籍 引退した有力選手一覧

北京オリンピックのワリエワ選手ドーピング問題で、現在批判の矛先が向けられているのが、ワリエワ選手を指導するエテリ・トゥトベリーゼコーチです。エテリ・トゥトベリーゼコーチは若き少女たちの才能を開花する能力に長けていますが、そのかわり、教え子の選手生命が短いことも知られています。

そこでこの記事では、エテリ・トゥトベリーゼコーチとそのチームが指導したものの、才能があるにも関わらず早くに引退してしまった選手やチームを移籍した選手についてご紹介していきます。

ワリエワのドーピング黒幕はエテリ・トゥトベリーゼ?叱責シーンが物議

審判の不正疑惑等のトラブルが事欠かない北京オリンピックですが、最も世界に衝撃を与えたのはフィギュアスケート団体戦と女子シングルに出場したカミラ・ワリエワ選手のドーピング問題ではないでしょうか?

わずか15歳の少女からドーピングの陽性反応が出るのも驚きですが、そんな彼女を暫定的に試合に出場させたことで、世界中のスポーツ関係者やスポーツファンから批判が殺到しました。

そしてそんな騒動の中心人物であるワリエワ選手は、大会前にはライバルと大差をつけて優勝と予想されていたにも関わらず、個人戦でかつてないミスを連発し、結果は4位に終わりました。

しかし、現在ワリエワ選手よりも非難されているのが、ワリエワ選手のメインコーチであるエテリ・トゥトベリーゼコーチです。15歳の少女が自分だけの判断でドーピングを行うと考えるのは不自然ですから(誤飲を主張していますが)、周りの大人が関わっているのだとすれば、真っ先に疑われるのがエテリ・トゥトベリーゼら指導者です。

エテリコーチは”鉄の女”という異名を持つほど結果至上主義。北京五輪女子フリーの大失敗演技後、メンタルがボロボロの状態でリンクから戻ってきたトゥトベリーゼコーチがワリエワ選手へ取った行動に世界はますます疑いを深めることとなりました。

むせび泣く15歳に鋭い睨みをきかせたのが、厳しい指導法で知られるコーチのエテリ・トゥトベリーゼだ。リンクから涙ながらに戻ってきたワリエワのそばに駆け寄るやいなや、容赦なく、「アクセルの後、戦うのを放棄したわね。なぜ諦めたの? 説明しなさい。なぜ?」と強い口調で問いただしたのだ。

https://news.yahoo.co.jp/articles/88f3455a6641ed87c4a17367168cb8809f89091f

このエテリコーチの行動にはあのIOCバッハ会長も「こんなにも冷たい態度を取れるものなのか」と非難するほど。

ドーピングの責任問題はさておき、精神的に大きく傷ついた少女が救いを求めて伸ばした手を、振り払うようなこの行為は見るに耐えません。

エテリ・トゥトベリーゼのチームは名門サンボ70クリスタル

エテリ・トゥトベリーゼコーチが指導を行っているのは、モスクワにある「サンボ70クリスタル」というフィギュアスケートクラブです。

サンボ70はフィギュアスケートだけでなく、柔道や陸上、水泳といったさまざまなスポーツにおける才能あるアスリートを育てる国営の育成機関です。

施設運営費用や、選手の育成費用は国が負担するので、たとえ貧しい家庭の子でも本格的な指導を受けることができます。

日本にはこのようなシステムは無いので羨ましく感じますが、国が選手を育てるということはつまり、選手には国の代表として恥ずかしくない結果を求められるということ。

逆を言えば、国を背負えない能力のない選手たちは次々と”ふるい”にかけられるサバイバルな環境ということです。

そんな国営の育成クラブ「サンボ70クリスタル」でメインコーチを務めるのがエテリ・トゥトベリーゼです。

エテリコーチのチームは一流の選手を育てるために、世界でもトップクラスに厳しく高難度のトレーニングを選手たちに課すことで知られてます。たとえば4回転ジャンプをマスターさせるために徹底的な体重管理する。ノーミスの演技ができるまで、一日に何度もプログラムを通し続けるといったトレーニングです。

このようなトレーニングについていける選手のうち、さらに能力の高い一握りの選手たちがトップクラスへの選手へと育成されていきます。

エテリが輩出した主要国際大会メダリストたち

エテリ・トゥトベリーゼ門下のスケーターたちは、厳しいトレーニングをこなすことで、ジュニアくらいの年令になると、すでに世界トップレベルで戦える選手に育っています。そんな彼女たちがシニアの舞台に参戦すると、各国のシニア有力選手たちが歯が立たないほど、圧倒的な強さでタイトルを獲得していきます。2014年以降の国際主要大会のメダリストはほぼエテリコーチの独占状態です。

これまでにエテリコーチのチームが輩出した有力選手は以下のとおりです。

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ユリヤ・リプニツカヤ

  • 2014ソチオリンピック団体金
  • 2014世界選手権 2位


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エフゲニア・メドベージェワ(写真右)

  • 2016,17世界選手権 優勝
  • 2018平昌オリンピック 銀メダル

アリーナ・ザギトワ(写真左)

  • 2018平昌オリンピック 金メダル
  • 2018世界選手権 優勝
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エリザベート・トゥルシンバエワ

  • 2019世界選手権 2位
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アンナ・シャルバコワ(写真左)

  • 2021世界選手権 優勝
  • 2022北京オリンピック 金メダル


アレクサンドラ・トゥルソワ(写真右)

  • 2021世界選手権 3位
  • 2022北京オリンピック 銀メダル


アリョーナ・コストルナヤ(写真中央)

  • 2019グランプリファイナル 優勝

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エテリ門下で早期に引退した才能ある女子選手たち

このように華々しく活躍するエテリ門下生ですが、才能があるにも関わらず若くして引退してしまう選手もいます(一部を紹介)。

ユリア・リプニツカヤ

ソチオリンピックが開催された2013-14シーズンの翌年から調子を落とし、アレクセイ・ウルマノフコーチの元へ移籍するも2017年に19歳で引退。

エリザベート・トゥルシンバエワ

もともとエテリ門下生だったがシニアデビュー時にブライアン・オーサーコーチに師事。2018年にエテリ門下に出戻り4Sを習得し2019世界選手権で2位になるも、よくシーズン以降はケガにより試合に出られず2021年に引退発表(最後の試合は19歳)。

ポリーナ・ツルスカヤ

2015-16シーズンにジュニア界を席巻し、将来を嘱望されるもケガの影響などにより2019年に17歳で引退。

アナスタシア・タラカノワ

2017ジュニアグランプリファイナルで3位になるも、2018年のオフシーズンに練習から遠ざかり、のちにプルシェンココーチの元へ移籍。翌年にもパノワコーチの元へ移籍するも調子が戻らず2021年に17歳で引退(本人の公表はないがメディアが報道)

ダリア・パネンコワ

2017ジュニアグランプリシリーズで2戦表彰台乗りするが2018年のオフシーズンにツェレバコーチの元へ移籍。その後も体型変化などに悩み2020年に17歳で引退。


エフゲニア・メドベージェワ

2018平昌オリンピックで金メダルを逃し、環境を変えるためによくシーズンよりブライアン・オーサーコーチの元へ移籍。オーサー門下でケガや体型変化に苦しみながらも2019世界選手権で3位に。翌シーズンには再びエテリ門下に出戻るが、ケガの影響などで2020-21シーズン以降試合に出ていない(最後の試合出場は20歳)。引退発表は無いが、現在は解説者・モデル・アイスショーなどを中心に活動しており、実質活動休止状態。

アリーナ・ザギトワ

3A(シェルバコワ、トゥルソワ、コストルナヤ)の躍進とともに、ロシア女子トップ争いから遠ざかる。2019年グランプリファイナル出場を最後に、競技選手としての活動を一時休止することを発表(当時17歳)。その後はアイスショー出演やメディアでの活動を行っている。

エテリ門下は選手の移籍も復帰も多い

前章では早期引退した有力選手を紹介ましたが、ほとんどの選手が引退の前にエテリ門下から移籍しています。この他にも、10代なかばでエテリ門下を去る選手は少なくありません。

とはいえ、フィギュアスケートの世界では、コーチとの相性や成績不振、さらなるレベルアップなどを目的に、選手がコーチを変えることは珍しいことではありません。

ですが、エテリチームにおいて注目したいのが、一度移籍した選手が、短期間のうちに出戻るケースが多いということ。

先ほど紹介したメドベージェワ選手も2シーズン後にはエテリ門下に復帰していますし、最近ではトゥルソワ選手やコストルナヤ選手が2020年にプルシェンココーチのチームへ移籍し、両選手とも翌年にはサンボ70に復帰しています。

メドベージェワ選手の移籍は後輩の追い上げや迫り来る体型変化、トゥルソワ選手の場合は4回転をもっと跳びたい、コストルナヤ選手の場合は練習環境が密だったため、エテリコーチに訴えたところ仲違いという三者三様の理由だったようですが、全ての少女がすぐに戻ってきているということは、「エテリ流トレーニング以上に自分を強くするトレーニングはない」と早々に悟ったからではないでしょうか。

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選手にとってエテリの指導は”特別”

選手たちがすぐに復帰したくなるほど、サンボ70クリスタルの指導は選手にとって特別なようです。

練習量がとてつもないのはもちろんですが、厳しい面はそれだけではありません。

元門下生の情報では練習で上手くできないと”ゴミ”呼ばわりされ、練習中ずっとゴミ箱に閉じ込められたとのことですし(ソース)、一日3回体重を計測し、のどが渇けば水を一口含んで、吐き出すという体重管理も徹底されていたようです(ソース)。エテリコーチも以前インタビューで「リプニツカヤの食事はサプリと水だけ」と語っていたこともあるほど。

この環境下で成果をあげてきた選手たちにとって、他のチームのトレーニングはぬるま湯のようにしか感じないかもしれませんね。

ですが傍目には、選手の人格や尊厳はそこにはなく、まさに異常とも感じられます。


そんな厳しい指導を行うエテリ・トゥトベリーゼコーチは2020年のISUスケーティングアワードで最優秀コーチ賞を獲得しています。


ワリエワ選手のドーピングが発覚し、エテリコーチ率いるサンボ70クリスタルの指導の実態も少しずつ明らかになってきた今、選手のオリンピック出場年齢制限の見直しや、練習環境の改善が叫ばれています。

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ワリエワ選手のドーピング問題はチームや周りの多くの大人が関わっていると考えるのが自然でしょう。ですが、例えばエテリコーチが責任を取ったとして全ての問題が解決されるでしょうか?これは選手のオリンピックでの成果を富国に利用するロシア国家のあり方にも関わる根深い問題かもしれません。

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