サッカー番組「やべっちFC」が18年半の歴史に幕を下ろしました。
Jリーグをはじめ、サッカーファンにとっては決して小さくない出来事です。
サッカーファンやサッカー選手、協会からも数多くの支持を得ていた番組がなぜ終了してしまったのでしょうか?
やべっちFCが18年半の歴史に幕!最終回に矢部「辞めたくない」
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— 日本サッカー協会 (@JFA) September 27, 2020
ハーイ!やべっち!
18年間ありがとう✨✨
\#やべっちFC(@yabecchifc_5ch )が本日の放送を持って最終回😢
歴代の日本代表監督も出演させていただきました。
一緒に日本サッカーを盛り上げ、そして楽しい番組をありがとうございました❗
最後の放送も楽しみにしています📺 #daihyo #jfa pic.twitter.com/MjXwOKx47N
ナインティナインの矢部浩之(48)がMCを務めるテレビ朝日のサッカー番組「やべっちF.C.」(日曜後11・55)が、27日の放送をもって18年半の歴史に幕を下ろした。
「やべっちF.C.」は02年4月、スタートしたサッカーに特化したスポーツ情報番組として、W杯日韓共催大会を前に放送をスタート。矢部のほか、国内外の数々のプロサッカー選手が出演し、サッカー人気の定着に貢献した。
矢部は番組のこれまでを振り返るVTRを見て「アカン、辞めたくない」と言葉をつまらせた。Jリーグの村井満チェアマン(61)が登場し「さみしい。でも本当にありがとうございます。日本サッカーの全ての気持ちを込めて、ありがとうございます」と花束を渡されると、「本当にスタッフの力と、解説者の皆さんの力と、アナウンサーの方々と、助けていただきました。サポーターのみなさん、本当に18年半ありがとうございました」と感謝した。
続けて「やべっちFCとして誇り、魂みたいなものは、皆さんの記憶の中に置いてきました」と、1998年フランスW杯のメンバーから落選したカズが帰国後の会見で語った「日本代表としての誇りと魂は向こうに置いてきた」という名言を“オマージュ”するようにコメントし「僕はサッカーを小学生の頃からやっていて教えられたことは、攻守の切り替えが大事だと。
なので次に進んでいきたいと思います。サポーター、選手、クラブチームのスタッフ、サッカー協会のみなさま、本当にありがとうございました。これからもサッカーに携わっていきたいと思います。またどこかで!」と最後は笑顔で締めた。
引用:https://news.yahoo.co.jp/articles/54ac468ae220ec486935d98033565a60f0b8e023
18年間日本サッカーを盛り上げ続けたやべっちFC
2002年、初の自国開催の日韓ワールドカップの前にスタートした「やべっちFC」は、日本代表はもちろん、地上波放送ではなかなか注目されないJリーグにもスポットを当て、18年以上日本サッカー界に寄り添い、ともに歩んできた番組でした。
2022年には放送20周年とカタールW杯を控えていただけに、18年半という、いわば中途半端な時期に放送終了してしまうのは、番組制作側も不本意だったのではないでしょうか。
やべっちFCといえば、Jリーグの試合速報はもちろん、たとえば国内選手のプライベートな一面や、海外組の不調な時期の密着映像、監督や戦術のコアな話など、一般のスポーツニュースではお目にかかれない濃密な内容を放送していたのは、サッカーファンの視聴者はもちろん、選手・関係者からも愛された番組だったからこそでしょう。
やべっちFCが終了した本当の理由とは?
サッカーという人気スポーツの専門番組。しかもサッカー番組の中でも看板番組と言えるやべっちFC。
深夜枠とはいえ、固定ファンを多く抱える長寿番組がなぜ終了してしまったのでしょうか?
テレビ朝日は「総合的な判断により」終了を決定したとしていますが、番組終了には致し方ない理由があったようです。
やべっちFC終了の理由は矢部浩之のモチベーション低下?
やべっちFC終了の理由は、一説にナインティナイン矢部浩之さんのモチベーションの低下が囁かれていました。
「一番の理由は、矢部さんの番組に対するモチベーションが薄くなってきたことです。家族との時間を重視するようになった昨今、深夜の生放送番組は敬遠しがちになりました。『やべっち FC』 の MCとして ワールドカップ本大会も何度も取材パスで現地に行ってますし、本人的にはもう満足なんじゃないですかね」
引用:https://news.yahoo.co.jp/articles/dd67e3a86308628697d1c8b72d1d2fdd7547effd
しかし、矢部さんは放送終了の噂が最初に報じられた直後のやべっちFCで「おじいちゃんになるまで盛り上げたいと思います……ハート」とコメントしていましたし、やべっちFC最終回の最後の最後には、ポロッと「アカン、辞めたくない」と本音をこぼしました。
これらの矢部さんの行動を見ていても、矢部さんのモチベーションが低下したということはなく、むしろ矢部さん自身も番組終了には不満があるように思われます。
やべっちFC終了理由は視聴率の低下?
テレビ番組の終了理由として定番なのが視聴率の低下です。
視聴率が低下するとスポンサー契約にも支障が出てくるためです。
ではやべっちFCも視聴率の低下が終了理由だったのかといえばそうとは言えないようです。
サッカーは日本で最も人気のあるスポーツですが、正確に言うとサッカー日本代表(特にA代表)が人気であると言えます。
そのため、やべっちFCもワールドカップ最終予選期間、ワールドカップ本戦、アジアカップなどの日本代表のスケジュールに伴い視聴率が上下します。
そういう意味では代表の試合が無い期間の視聴率は低くなるのですが、Jリーグファンという固定視聴者層を抱えているため、Jリーグが存在する限り、やべっちFCの視聴率が急落するということはありません。
ただ、今年は新型コロナウイルスの影響でスポーツの試合も中止・延期が相次ぎました。この影響はやべっちFCの視聴率にも響いていると思われます。
ですが、これはあくまで一時的な事態であり、スポーツ界全体の問題です。それに自体が落ち着けばすぐ先には東京オリンピックや、ワールドカップという大イベントが待ち構えているわけですから、コロナ禍の視聴率低下が終了理由になったとは言い切れないでしょう。
やべっちFC ”本当の”終了理由はテレ朝の代表戦中継撤退

テレビ朝日といえばこれまで、ワールドカップ最終予選の中継を行ってきました。
「絶対に負けられない戦いが、そこにはある」というコピーは、今やサッカーの枠を通り越して、国民的市民権を得ていますよね。
それに解説者の松木安太郎さんの、「キーパーいなかったら入ってましたよ!」「ガーッと行って、ドーンと決めたら監督は文句言いませんよ」など解説として全く機能していない居酒屋解説は、一周回ってサッカーファンたちから愛されていました。
そんなテレビ朝日がワールドカップ最終予選の放映権を放棄したんです。
実はこれがやべっちFC終了の真の原因だと言われています。
そもそもワールドカップ最終予選放送は、テレビ局にとってはドル箱でしかなかったそうです。
ではなぜ放映権を手放したのか?
それは香港の代理店・DDMC FortisがAFC(アジアサッカー連盟)と巨額の放映権契約を結んだためです。
香港のDDMC Fortisが8年2000億円でAFCから放映権獲得
来年3月の開始を予定しているサッカーの2022年ワールドカップ(W杯)カタール大会アジア最終予選で、日本代表の試合の地上波テレビ中継が暗礁に乗り上げている。これまで放映権を持っていた、テレビ朝日は契約満了で撤退。アジアサッカー連盟(AFC)が来年から8年間の放映権契約を、香港が本社の代理店と2000億円超という途方もない金額で結んだため、日本のテレビ各局は二の足を踏まざるを得ない状況だ。
(中略)
テレ朝がAFCと結んできた放映権契約は、最高でも4年総額で170億円台。あまりのケタ違いで、契約更新を見送らざるを得なかった。
引用:https://www.zakzak.co.jp/spo/news/200728/scr2007280001-n2.html
これまで4年間170億円の契約だったのが、8年間2000億円超の結ばれたら手も足も出ませんね。
代表戦のテレビ放映がドル箱といえども、収入以上に多額の放映権料がかかるのであれば、テレビ局は身を引かざるをえなくなります。
代表戦(アジア最終予選)から手を引くということは、日本代表ファンを引きつける力が弱くなるということです。
となるとやべっちFCにも大きな影響を与えてしまいます。
やべっちFCはJリーグファンと日本代表を、そして日本代表ファンとJリーグをつなげる架け橋となり、テレビ朝日にサッカーファンを呼び込むPR隊長の役割を担ってきたわけですが、肝心の代表戦が削られてしまえば、その役割は十分に機能できません。
そうなるとスポンサー契約にも影響が生じ、番組制作自体が苦しくなりますよね。
つまりいくら日本代表人気が高かろうが、やべっちFCの視聴率が悪くなかろうが、代表戦放映権を失ったテレビ朝日はやべっちFCを続けられないと判断したのでしょう。
ちなみに、DDMC Fortisの放映権契約には「中東圏を除く全世界でAFC主催試合を放映できる」という条件が含まれているそうです。
全世界にアジアのサッカーが見てもらえるようになり、日本人は地上波で代表戦が見られなくなる…皮肉ですね。逆らえない時代の流れを感じざるを得ません。