年賀状の季節になりましたね。
先日ふと、子供の頃にプリントゴッコを使って年賀状を作成していたことを思い出したのですが、プリントゴッコって今も販売されているのでしょうか。
プリントゴッコの現況を調べてみました。
平成初期に大ヒット!家庭用印刷機プリントゴッコ
昭和の終わりから平成初期にかけて大ヒットしたプリントゴッコ。
理想科学工業株式会社が開発した家庭用印刷機で、年賀状を好きなデザインと好きな色で素早く印刷できる画期的な装置でした。
プリントゴッコはスクリーン印刷(孔版印刷)という技術が用いられており、まず手描きのデザイン画を作成し、それをマスターと呼ばれる原盤に転写して製版(このとき電球をピカッと光らせるのは毎回ドキドキでした)。そしてデザイン通りの小さな孔(あな)が開いたマスターに専用インクを載せ、マスターとはがきをプレスしてインクを印刷するという仕組みです。
当時はインターネットが無く、ネットで年賀状印刷を注文するサービスは当然ありませんでしたし、パソコンやプリンターが無い家庭も普通だったので、年賀状と言えば一枚一枚手書きするのが当たり前。そんな時代に同じデザインの年賀状を大量に作れるプリントゴッコはまさに救世主のような存在でした。
私は当時小学生でしたが、プリントゴッコで華やかな年賀状が作れるのがとても楽しかった記憶があります。
実はプリントゴッコは、”ゴッコ”というだけあって当初は子供向けの知育玩具として開発されたそうですよ。
プリントゴッコヒットの歴史
家庭用印刷機プリントゴッコは驚異のヒットを飛ばしました。
以下がプリントゴッコの歴史です。
- 昭和52年 「プリントゴッコB6」発売
- 昭和61年 上位機「プリントゴッコB6ハイメッシュセット」発売
- 昭和62年 年間販売台数72万台達成
- 平成3年 「プリントゴッコPG-10スーパー」発売
- 平成5年 年間売上金額153億円達成
- 平成7年 「プリントゴッコPG-11」「プリントゴッコPG-5」発売
- 平成8年 累計販売台数1000万台を達成
- 平成20年 プリントゴッコ本体販売終了
- 平成24年 プリントゴッコ事業終了
平成一桁台の全盛期までに1000万台も売り上げていたんですね。
単純計算はできませんが当時の世帯数からすると、4~5件に一台はプリントゴッコを使用していたことになります。
プリントゴッコは2012年に完全に販売終了していた
上の年表にも記していますが、プリントゴッコは2008年に本体販売を終了、2012年には事業自体も終了しています。
理想科学工業株式会社(社長:羽山 明)は、平成24年(2012年)12月28日をもってプリントゴッコ事業を終了いたします。
https://www.riso.co.jp/release/20110920.html
当社は、平成20年(2008年)6月にプリントゴッコ本体のメーカー販売を終了し、以降はランプ・インク・マスターなどの関連消耗品の販売、およびサポートを継続してまいりました。しかしながら、需要の減少がいっそう進んだため各種消耗品の継続生産が難しく事業継続が困難であると判断し、消耗品の販売ならびにサポート業務等、同事業をすべて終了することにいたしました。
つまり現在、プリントゴッコは市場に出回っておらず、製品サポートも行われていないということです。
プリントゴッコ衰退の理由はパソコンとインターネットの普及
販売当初は画期的で便利な発明だったプリントゴッコ。
しかし、世の中にインターネットは普及し、パソコンの価格も下がり、パソコンやプリンターを持つ家庭が多くなったことがプリントゴッコに打撃を与えました。
当時は”お手軽”だったスクリーン印刷も、印刷ボタン一つで100枚200枚とカラフルな年賀状が作れるようになった時代においては”面倒くさい”と感じる人が増えてしまったからです。
プリントゴッコも時代に合わせて、原稿をスキャナで取り込めるインクジェット方式の新商品を発売しましたが、それでも時代のながれから取り残されていきました。
便利が当たり前になった時代にプリントゴッコが見直されている?
プリントゴッコ事業終了から更にときが経過していますが、今なおプリントゴッコの再販を願う声は止みません。
これですよこれ!プリントゴッコ!
— まえまわりうけみ (ボンバーズNo.108) 時々「津軽恋女」 (@maemawari_ukemi) December 13, 2020
理想科学さん、どうかひとつ──どうかひとつ!#ぐれぷれ pic.twitter.com/sUMknZ17Sd
現在はモバイル端末の発展により、アプリでサクッとオリジナルの素敵な年賀状が作れるようになりました。
そんな”便利が当たり前”になった世の中だからこそ、手作りのぬくもりを感じるプリントゴッコが見直されているのではないでしょうか?
私も子供を持って改めて、手作りのワクワクとクオリティを兼ね備えてプリントゴッコの凄さを実感するようになりました。
プリントゴッコに再販予定や後継機はある?
残念ながら現在、プリントゴッコに再販予定はありません。
プリントゴッコ販売元の理想科学工業㈱はプリントゴッコの売上を元手に、少スピード・少コストで印刷可能な業務用の孔版印刷機「リソグラフ」を開発し、190以上の国と地域に販路を広げ、成功を収めました。
また同社は「ゴッコプロ」という小型のシルクスクリーン印刷機も販売しています。
こちらは紙や布製品等に好きなデザインを印刷できる小型のシルクスクリーン印刷機なのですが、プリントゴッコの後を継ぐ家庭用印刷機というよりも、ビジネス用として使う製品です。価格も100万円以上します。
つまり、理想科学工業㈱にはいまのところプリントゴッコの再販予定も後継機の取り扱いもありません。
しかし、JAMという会社からプリントゴッコと特性の似た”スリマッカ”という商品が販売されています(後述)。
今プリントゴッコを購入する方法はある?
プリントゴッコは現在販売終了しているため、理想科学工業㈱や代理店を通じて購入することはほぼ不可能でしょう。
現在プリントゴッコを購入したい場合は、中古品を購入することになります。
中古品なら通販でも購入可能
Amazonや楽天市場などにも中古品のプリントゴッコの販売がされています。
販売中の中古プリントゴッコを見てみる
中古品なので価格に変動がありますが、これらの大手通販サイトでは新品以上の高額な価格設定がなされている場合もあるので注意が必要です。
より安価に入手したい場合は、メルカリやラクマ等のフリマアプリで業者ではなく個人が出品しているものを探すことをおすすめします。
タイミングにもよりますが、私がラクマでチェックしたところ個人の方が本体やパーツの中古セットを3000円程度で出品していました。
ですがあれほどのヒット商品ですから、案外知人を尋ね回ってみると簡単にお安く手に入るかもしれませんよ。
パーツもネットで手に入る
ランプやインク、マスター原紙などの各パーツもそれぞれネットで購入可能です。
Amazonや楽天市場、フリマアプリでも販売されています。
ちなみにパーツに関しては、昔ながらの文具屋さんや商店に眠っていたものを売ってもらったという情報もあったので、そのようなお店がご近所にあれば問い合わせてみると良いかもしれませんね。
プリントゴッコに似た商品”スリマッカ”は代わりになる
プリントゴッコなき今、代わりを果たしてくれそうな商品があります。
それが、JAMという会社が販売している「スリマッカ(SURIMACCA)」という商品です。
スリマッカはご家庭でシルクスクリーン印刷を楽しめます。
スリマッカは紙だけでなく、さまざまな布製品にもプリントできますし、プリントゴッコ以上の大判プリントが可能。
そしてプリントゴッコの手間であった、デザイン画を製版する工程を、販売元が行ってくれるというメリットもあります。
スリマッカの使用方法
スリマッカの使用法はつぎの通りです。
- プラスチック製の枠に製版したシルクスクリーンを貼る
- それを紙や布の上にセッティングする
- スクリーンの上にインクを置く
- インクをヘラでこすようにして印刷する
文字では分かりづらいので、動画を御覧ください。
スリマッカの注文方法や価格は?
スリマッカを始めて利用する場合は、JAMのオンラインショップでプラスチック枠や、インク、盤を固定するためのゴムなどのパーツを買い揃え、製版サイズとメッシュの種類(孔の数)を選び、デザイン原稿を入稿するという流れになります。
すべてのパーツをバラ購入できるので、自分の必要なパーツだけを組み合わせて注文できますが、はじめての場合はどれを選んだら良いか分かりませんよね。
そういう場合は、もともと必要最低限のパーツが一式揃ったスリマッカセット(3,960円~)とお好みのインク(660円~)を購入すると良いでしょう。
また、Tシャツセットや、巾着セットなど、目的別のパーツセットも販売されています。
価格は200×80mmXS(最小サイズ)・一色刷りの場合で
スリマッカセット4,840円(製版込み)+インク一色660円+送料
となります。
次回以降、同じサイズの作品を作るのなら、製版代880円(+インク代)+送料だけでOKです。
大きなサイズに挑戦したい場合はプラスチック枠のパーツを追加注文しましょう。
スリマッカのデメリットは?
プリントゴッコよりも手軽に安価に孔版印刷が家庭でできるスリマッカですが、プリントゴッコでは可能だったのに、スリマッカではできない技術もあります。
まず一つが、円形グラデーションやマーブルなどの凝った配色ができないことです。
もちろん1回だけの印刷であれば可能ですが、年賀状のような何枚も刷る作品の場合はインクが混ざってしまうため、毎度インクを交換しない限り難しいでしょう。
そして2つ目が色の細かなエリア分け。
プレスして色を乗せるプリントゴッコでは、狭い範囲でも仕切りウレタン(?)を使えばエリアによって色分けができました。
そのため一度の印刷でカラフルなはがきを作ることができました。
しかし、スリマッカ場合、一回一回インクをヘラでスライドさせるので、エリアによる色分けの難易度が高くなります。
とくに隣り合った小さな絵柄を色分けするというような細かい作業ですと、インクが混ざってしまうため難しいでしょう。
スリマッカで複数枚を多色刷りする場合、エリアごとに色を分けなたいなら、例えば一回目に赤を塗りたい箇所以外の版をマスキングで隠して赤を刷る。そして版の赤インクを落としてから同様の方法で2色目を刷る。重ね塗りをしたい場合はパーツごとに必要な枚数の製版して、重ねて刷るという方法があります。
スリマッカはデメリットを補うほど、多彩な表現ができる
スリマッカのデメリットはすこし不便にも感じますが、スリマッカはプリントゴッコとくらべて優しく色が乗るので、多色刷りもより味のあるアーティスティックな仕上がりになりますよ。
2色刷りもおしゃれです↓
小さなお子様から楽しめる、令和版のプリントゴッコことスリマッカ。
あなたも子供のころのワクワクを思い出しながら楽しんでみてはいかがですか。