バッハの名曲として有名な「G線上のアリア」が、ドラマ「G線上のあなたと私」で再び注目を集めています。
ところで”G線上”って何でしょう?
”アリア”の意味をご存知ですか?
クラシック入門者にも分かりやすく解説します。
ドラマ「G線上のあなたと私」で「G線上のアリア」が注目される
現在公開中のドラマ「G線上のあなたと私」。
波瑠さん、中川大志さん、松下由樹さんが演じる世代もライフスタイルも違う3人の男女が大人のバイオリンスクールで出会い、友情を深める中で自分自身を見つめ直すというドラマです。
原作はいくえみ綾さんの同名漫画
いくえみ綾さんと波瑠さんが過去にタッグを組んだ「あなたのことはそれほど」も人気ドラマになったので今回の「G線上のあなたと私」も楽しみですね。
物語の鍵を握るG線上のアリア
「G線上のあなたと私」の鍵となっているのは「G線上のアリア」という曲です。
主人公たちがヴァイオリンを始めたキッカケも、初めての発表会で挑戦する曲もG線上のアリア。
G線上のアリアはクラシックに詳しくなくても、テレビや街なかで一度は耳にしたことがあるだろう有名な曲です。
心が洗われるようなとても美しいメロディラインですよね。
バイオリンの澄んだ音色が心地良です。
ですが、もしかしたら「G線上のあなたと私」を見て初めて、この曲がG線上のアリアという曲名だと知った方も少なく無いのではないでしょうか?
と同時に
”G線上”って何?どこ?
この曲はどんな曲なの?
と疑問に思った方も多いはず。
というわけで”G線上”の意味やこの曲の由来などをご紹介します。
「G線上のアリア」の”G線上”ってどんな意味?
G線上のG線とはバイオリンの弦のうちの最も太い(最低音の)第4弦のことです。
G線のGとは音名の一つです。
(音名についてはちょっと話が長くなるので次の章で解説しています。興味ある方は読んでみてね!)
そしてG線上とはつまり、バイオリンのG線(第4弦)のみを使って演奏できるという意味なんです。
Gってどんな音なの?
さっきGは音名と書きましたが、それについてちょっと詳しく説明しますね。
音の名前といえば「ドレミファソ」が一般的だと思いますが、このドレミは”階名”というものなんです。
階名は楽譜を読む時に使うことが多いですね。
例えばカエルの歌なら「ドレミファミレド ミファソラソファミ」みたいに。
ですが実は、ドレミって絶対的な音の高さではないんです。
つまりどういうことかと言うと、
ピアノとトロンボーンというように異なる楽器で同じ楽譜を見て演奏しても、楽器の構造が違うため、出てくる音の高さが違うんです。
もしピアノとトロンボーンが同じ音の高さを鳴らそうとするのなら、
ピアノのドにトロンボーンが合わせる場合レを出さないといけないし、トロンボーンのドにピアノが合わせる場合はシ♭を鳴らさないといけないという感じです。
この音の高さの違いは楽器によってマチマチなんですね。
でもそれじゃあ、大人数の楽団が音を合わせるって大変そうじゃないですか?
でも実際はそう大変ではありません。
なぜなら音にはどの楽器でも同じ高さで奏でられる、共通の音の名前、つまり”音名”があるからです。
この音名は
C、D、 E、 F、 G、 A、 H とう言うように表記します。
(ドイツ語ではツェー、デー、エー、エフ、ゲー、アー、ハーと読む)
楽団などで「Cを出して」といえば
ピアノはドを鳴らし、
トロンボーンはレを鳴らします。
すると同じCの高さの音が出ます。
ここまでなんとなくお分かりいただけましたか?
そしてGの話に戻りますが、
Gも音名でしたよね。
Cより4つ上の音です。
つまりGとはピアノで言うところのソにあたる音ですね。
そしてバイオリンのG線は
指で抑えていない状態で鳴らす(開放音)とGの音が出る弦なんです。
ちょっと分かりにくいかもしれませんが
これであなたも他人から「G線上ってなに?」
じゃあ「Gってなに?」て聞かれてもバッチリ答えられるのではないでしょうか?
G線上のアリアの”アリア”ってなに?
アリアとはオペラなどの劇中に登場する、特定の人物の独唱曲のことです。
登場人物の特徴や重要な場面の雰囲気が象徴的に表される曲です。
例えばオペラ「トゥーランドット」の”誰も寝てはならぬ”や
「カルメン」の”ハバネラ”などは大変有名なアリアですね。
ここから転じて、叙情的な歌曲を一般的にアリアと呼ぶようになったようです。
でも待って、G線上のアリアには歌がないはず。
だったら「歌曲」じゃないのでは?
そう思ったあなた、鋭いです!
その答えは次の章に関係しています。
「G線上のアリア」はバッハ作曲じゃなかった
Embed from Getty Images皆さんがよく耳にしている「G線上のアリア」は実は「G線上のアリア」ではないかもしれません。
「G線上のアリア」はバッハの曲というイメージが強いかと思いますが、実はバッハの作品には”G線上の”アリアという曲はないんです。
バッハが作曲したのは「 管弦楽組曲第3番二長調 BWV1068 」の第2曲「アリア(エール)」です。
かの有名な「G線上のアリア」は、バッハの原曲「アリア(エール)」をもとに、バイオリニストのアウグスト・ウィルヘルミがバイオリンの独奏のために編曲したもののタイトルで、この編曲によってウィルヘルミはG線のみでこの曲を演奏することができたんだそうです。(今ではこちらの編曲の方が一般的になりました。)
つまり、バッハがG線だけで奏でられる曲を作ったというわけではないようなんです。
そしてこの曲が”アリア”と名付けられた理由についてですが、
バッハの 「 管弦樂組曲第3番二長調 」 は
序曲/アリア(エール)/ガヴォット/ブーレ/ジーグの5曲編成となっています。
第2曲のアリアにも当然歌は入っていません。
しかし、第2曲は非常に叙情的なフレーズであり、組曲をオペラのように一つのストーリーとして見たときに、アリアの役割を果たしていることから「アリア」という名前が付けられたと考えるのが自然なようです。
バッハはこの曲だけでなく「ゴルトベルク変奏曲」にもアリアを取り入れていますし、有名な作曲家の管弦楽曲にもバッハのようにアリアと名付けられた曲がいくつか存在しているんですよ。
以上、Gで線上のアリアの曲名の解説でした。
G線上のアリアは様々な音楽家や楽団に演奏されています。
動画サイトなどで聴き比べて見て、お気に入りの演奏を探してみては?