2022年秋クールのドラマ「エルピス ー希望、あるいは災いー」。12年前に起きた連続殺人事件の犯人の死刑冤罪について、テレビ局のアナウンサー浅川恵那(長澤まさみ)と、バラエティ番組の若手ディレクター岸本拓郎(前田郷敦)が真相に迫るというドラマですが、実在となった事件はあるのでしょうか?
「エルピス」は実在事件がモデルのフィクションドラマ
長澤まさみさん主演のドラマ「エルピスー希望、あるいは災いー」が面白いと話題です。
「エルピス」は長澤まさみさん演じるテレビ局のアナウンサー浅川恵那と、前田郷敦さん演じる若手ディレクター岸本拓郎が、12年前に起きた少女連続殺人事件(八頭尾山連続殺人事件)の死刑判決について、冤罪か否かの真相に迫る社会派ドラマ。
国家権力による報道への圧力に切り込む今作は、フィクションでありながら現実社会の裏側を描いているようで実にリアルです。
そんな「エルピス」ですが、このドラマは実在の複数の事件から着想を得て作られています。
そのモデルとなった事件はいつ、どこで起きた事件なのでしょうか?
と、その前に、まずは「エルピス」に登場する少女連続殺人事件についておさらいしておきましょう。
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「エルピス」の八頭尾山連続殺人事件はどんな事件
ドラマ「エルピス」の劇中に登場する八頭尾山連続殺人事件はこのような事件でした。
- 2002年から2006年にかけて若い女性3人が連続して殺害された
- 女性の遺体は八頭尾山に遺棄された
- 2006年、現場近くに住む当時50歳の板金工・松本良夫が殺人容疑で逮捕された
- 松本が一人の家出少女を自宅に保護していたをメディアが「ロリコン」などと取り上げたことで松本が犯人であるという風潮が高まった
- 松本良夫は取り調べで事実を認めるが、その後の裁判では無罪を主張
- 2016年、最高裁で松本良夫の死刑確定
- 2018年、中2少女の誘拐事件が発生。その後少女の遺体が八頭尾山で発見される
「エルピス」八頭尾山連続殺人事件のモデルとなった事件はいつごろのどんな事件?
「エルピス」の八頭尾山連続殺人事件のモデル(参考にされた事件)は以下のとおりです。
(ドラマのエンドロールで、参考文献としてあげられていた事件をご紹介しています。)
足利事件
足利事件はこんな事件
- 1990年、栃木県足利市のパチンコ店で4歳女児が行方不明に
- 翌朝、近くの渡良瀬川の河川敷で女児の遺体が発見された
- 1991年、同市在住の菅家利和が逮捕される
- 菅家利和は警察の取り調べ(拷問のようだったと後に証言)で自白するものの、一審途中から容疑を否認
- 2000年、DNA鑑定が証拠となり最高裁で菅家利和の無期懲役が確定(当時のDNA鑑定は今より不正確)
- 2002年、菅家利和が再審請求申し立て
- 2008年、東京高裁でDNA再鑑定が決定
- 2009年、DNA再鑑定再鑑定の結果、菅家利和のDNAと犯人のDNAとの不一致が証明され、釈放される
- 真犯人については事件後にテレビ局の記者などが犯人の特徴と告示した男を見つけるなどしていたが、事件自体が時効を迎えたため犯人は不明のまま
- 栃木県内では、1979年以降幼女の誘拐事件が相次ぎ、4名の女児が無くなっているが、同一犯の犯行も疑われる(つぎの北関東連続幼女誘拐事件を参照)
- 犯人の目撃証言と菅家利和の特徴には矛盾点があったものの、警察が一部の証言者に証言の撤回を迫ったという記録がある
エルピスの参考文献(一部)↓
北関東連続幼女誘拐殺人事件
北関東連続幼女誘拐殺人事件はこんな事件
- 1979年以降に栃木県足利市と群馬県太田市で起きた、4件の幼女殺人事件と1件の女児連れ去り事件の総称
- 冤罪事件だった足利事件もこのうちの1件に含まれている
- 事件は全て栃木県と群馬県の半径20Km以内で起きた
- うち3人の遺体は渡良瀬川の河川敷で発見された
- うち3件の女児行方不明現場はパチンコ店
- うち4件の事件が週末に発生
- 被害者は4歳~8歳の女児
- これら5件の事件は共通点が多いことから同一犯の犯行が疑われる
- 犯人は見つかっていない
- 5つの事件以外にも、昭和50年代から平成にかけて、小学生~高校生の少女が失踪・殺害される事件が相次いでいる
エルピスの参考文献↓
東電OL殺人事件
東電OL殺人事件とはこんな事件
- 1997年3月、東京電力東京本店に勤務する39歳の女性が渋谷区円山町のアパートの1室で発見される
- 被害女性はエリートOLである一方で、売春をしたり、拒食症を患っていたりと精神的に病んでいたとされる
- 同年5月、同アパートに不法滞在中のネパール人ゴビンダ・プラサド・マイナリ(当時30歳)が逮捕される
- ゴビンダは被害女性の売春相手の一人であり、事件現場からゴビンダの体毛や体液がついた避妊具が発見されたことが証拠となった
- ゴビンダは無罪を主張
- 2000年第一審では、第三者の体毛の存在が明らかになったため、無罪判決(裁判長の大渕敏和はその後左遷される)
- 2003年、最高裁でゴビンダの無期懲役が確定
- 2005年、ゴビンダが再審請求
- 2011年、被害者の体に付着した体毛や、爪や陰部から検出されたDNAが第三者Xのものであると判明
- 2012年6月、再審開始
- 同年7月、ゴビンダの無罪確定
- 不法滞在者だったゴビンダは釈放後、すぐにネパールへ帰国
- 真犯人はいまだ見つかっていない
エルピスの参考文献↓
本庄保険金殺人事件
埼玉県本庄市で起きた連続保険金殺人事件はこんな事件
- スナックを営む主犯の八木茂が、店のホステスで愛人の女性3名(武まゆみ、森田考子、アナリエ・サトウ・カワムラ)と共謀し、ホステスと男性客を偽装結婚させた後に客を殺害するという事件
- 男性客2人が死亡し、1人が一時重体となった
- 生存した被害者の告発で事件が明らかとなる
- 第1の事件は元工員の男性(当時45歳)をトリカブトを摂取させて利根川で水死させる
- 第1の事件で偽装結婚したホステス(アナリエ)に保険金3億円が支払われるも、後に保険会社の民事訴訟によって保険金返還命令が下る
- 第2の事件は元パチンコ店員(当時61歳)に酒とかぜ薬を大量に飲ませて殺害
- 第2の事件では、偽装結婚したホステス(森田考子)に1億7千万円の生命保険が掛けられていた
- 第3の事件は元塗装工の男性(当時38歳)を薬物中毒で殺害しようとするも、男性が一命を取り止める
- 第3の事件では偽装結婚の嫁、アナリエを受取人とする9億円の生命保険が掛けられていた
- 2000年3月、八木茂とホステス3人は偽装結婚による公正証書原本不実記載容疑で逮捕され、その後、殺人罪や詐欺罪などで起訴
- 2008年、最高裁で八木茂の死刑が確定も、現在は再審請求中
- 武まゆみは無期懲役、森田考子は懲役12年、アナリエ・サトウ・カワムラは懲役15年の有罪が確定しているが、警察に無理やり証言させられたため冤罪であると弁護団が主張している
- 八木茂は疑惑が報じられてから逮捕されるまでの約8ヶ月間にマスコミ各社に有料の記者会見を200回以上行い、およそ1000万円を荒稼ぎしていた
エルピスの参考文献↓
その他の参考文献↓
いずれも冤罪が関わる印象的な事件ばかりですね。足利事件、北関東連続幼女誘拐殺人事件、東電OL殺人事件はいずれも冤罪が証明され、真犯人が捕まっていないという事件。警察や検察の問題点が浮き彫りとなりました。
一方、本庄保険金殺人事件は、犯人が限りなく黒であるけれど、無罪を主張している事件です。人間の傲慢さ、卑しさが浮き彫りとなりました。
これらの事件を参考に描かれている「エルピス」は今後、どのように展開していくのでしょうか?ー希望、あるいは災いーというサブタイトルの真意も気になるところです。
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