サッカー界の年間最優秀選手に送られる賞、バロンドール。2020年度はコロナ禍の影響で、選出自体が中止となりましたが、2021年は2年ぶりに復活。リオネル・メッシが選出され、メッシは史上最多の7度目のバロンドーラーとなりました。その一方で、本来であれば2020年バロンドール最有力候補だったレヴァンドフスキが受賞を逃したことに対して、多くの惜しむ声が寄せられています。
この記事では、バロンドールの決め方や、選出に反映される期間(シーズンなのか年単位なのか)などを振り返ります。
そして、ここ10年以上、メッシとクリスティアーノ・ロナウドのほぼ2強であるバロンドールに殿堂入りを導入する場合のメリット・デメリットについても触れています。
2021年はメッシが7度目のバロンドール受賞!レヴァンドフスキは2位に
メッシが史上最多7回目のバロンドール受賞!🥇🏆#ballondor | #UCL pic.twitter.com/L2R2L2hnAQ
— UEFAチャンピオンズリーグ (@UCLJapan) November 29, 2021
「フランス・フットボール」は現地29日、世界で最も活躍した選手に贈られるバロンドールの2021年受賞者を発表。現在パリSG所属でアルゼンチン代表のリオネル・メッシ選手(34)が受賞しました。
https://news.yahoo.co.jp/articles/272f46d3372ec2670ab6af4d8ca758504e6811e1
メッシ選手は、スペインリーグのバルセロナに所属していた2020-21シーズンに、30ゴールを挙げて得点王に輝きました。さらに今年の夏に行われた南米選手権では、得点王と大会MVPを受賞する活躍で、アルゼンチンの優勝に大きく貢献しました。
バロンドールは2020年、新型コロナウイルスの影響で中止。メッシ選手は2019年に続く連続受賞で、自身の持つ最多記録を更新する7度目の受賞となりました。
投票結果トップ10は以下の通りです。
- メッシ(パリSG/アルゼンチン)
- レヴァンドフスキ(バイエルン/ポーランド)
- ジョルジーニョ(チェルシー/イタリア)
- ベンゼマ(Rマドリード/フランス)
- カンテ(チェルシー/フランス)
- C.ロナウド(マンチェスターU/ポルトガル)
- サラー(リヴァプール/エジプト)
- デブライネ(マンチェスターC/ベルギー)
- エンバペ(パリSG/フランス)
- ドンナルンマ(パリSG/イタリア)
2位にランクインしたレヴァンドフスキは、2019-20シーズンにリーグ優勝(前人未到の8連覇)、リーグMVP、カップ戦優勝、CL優勝という数々の輝かしいタイトルを手にし、バロンドール最有力候補ともくされていましたが、残念ながら2020年のバロンドール授与はコロナ禍の影響で中止に。2020-21シーズンもブンデスリーガのシーズン得点歴代最高記録(41G)を樹立し、リーグ優勝に貢献する活躍を見せましたが、総合的な個人評価ではメッシの活躍に及ばず”幻のバロンドーラー”となりました。
2021年に7度目のバロンドールを受賞したメッシも授賞式でレヴァンドフスキに対し「去年、バロンドールがあれば、君が受賞者にふさわしかった」というメッセージをおくっています。
これを見るとバロンドールはメッシしかいないと思うんだよな。#バロンドール pic.twitter.com/IX7o4NXiSN
— winning (@mamilso) November 28, 2021
バロンドール選考対象期間はいつからいつまで?
新型コロナのパンデミックという異常事態が発生したとはいえ、圧倒的な活躍をした選手がバロンドールを逃してしまうのは残念なことですよね。
ここでバロンドールの選考対象期間を確認しておきましょう。
バロンドールは年間を通じで世界で最も活躍したサッカー選手に贈られる個人賞です。
年間とは1シーズンの期間中のことを言います。つまり1シーズン中に行われる国内リーグ、カップ戦、CL等の各大陸のクラブ大会、W杯、各大陸の代表大会(EUROやコパ・アメリカ)等での実績が審査対象となります。それに加えて選手の人間性や過去の実績なども考慮しつつ総合的に評価し、最もふさわしい選手が選出されます。
レヴァンドフスキは2019-20シーズンから2020-21シーズンにかけて大活躍しましたが、主な評価は2020-21シーズン中の活躍になるため、この期間により優れた実績を残したメッシが受賞したというわけです。
バロンドールの選出方法は?
バロンドールの選出方法は以下の通りです。
- 10月初旬にサッカー誌『フランス・フットボール』が受賞候補30選手をノミネートし、発表
- 11月中~下旬までに各国ジャーナリスト(2021年は180名)が各選手に投票
- 11月末~12月初旬に投票ポイント1位の選手にバロンドール授与
投票システム
各記者はノミネート30選手の中から1位から5位までを投票する。1位=6pt、2位=5pt、3位=4pt、4位=2pt、5位=1ptと選手にポイントが与えられ、合計ポイント1位の選手がバロンドールに選出される。
2010年~15年までの間は『フランス・フットボール』とFIFAがバロンドールを共催しており、この期間中はジャーナリストだけでなく、各国代表監督とキャプテンにも投票権が与えられていました。しかし、監督やキャプテンが選ぶ1位と、ジャーナリストが選ぶ1位が違うという問題があったり(選手・監督は客観性よりも個人の思い入れを優先する傾向があった)、共催の契約期間が満了となったことなどから、2016年以降は、客観性を重視した本来のジャーナリストのみの選出方法に戻りました。
2008年以降13年間メッシとクリスティアーノ・ロナウドのほぼ2強!殿堂入り導入を望む声も
バロンドールは2008年以降、2018年のモドリッチを除いて、全てのバロンドールをメッシとクリスティアーノ・ロナウドの2選手が獲得しています。
- 2008 クリスティアーノ・ロナウド
- 2009 リオネル・メッシ
- 2010 リオネル・メッシ
- 2011 リオネル・メッシ
- 2012 リオネル・メッシ
- 2013 クリスティアーノ・ロナウド
- 2014 クリスティアーノ・ロナウド
- 2015 リオネル・メッシ
- 2016 クリスティアーノ・ロナウド
- 2017 クリスティアーノ・ロナウド
- 2018 ルカ・モドリッチ
- 2019 リオネル・メッシ
- 2021 リオネル・メッシ
なにかの冗談みたいですが、それほメッシとクリスティアーノ・ロナウドが突出した選手であることを否定できる人はいないのではないでしょうか。とはいえ、メッシとクリスティアーノ・ロナウドが異次元の選手であると世界中が認めているからこそ、二人のような圧倒的な選手は殿堂入りにしたほうが良いのでは?という声も少なくありません。
・バルサもパリもバイエルンも毎試合チェックしてる訳ちゃうからメッシかレヴァンドフスキかどっちがバロンドールにふさわしいってハッキリ言えんけど、もうメッシがとんでもないのは周知なんやから殿堂入りみたいな感じにしたら平和ちゃうん。
・メッシのバロンドールは殿堂入りとかにしないと、他の選手が可哀想になってくる。
・バロンドールに関してはメッシ、ロナウドと同じ世代に生まれた選手が不遇すぎて... 殿堂入りとか考えないのかな(笑)
・バロンドール3回以上とったら殿堂入りでよくないですか?
・もうメッシは殿堂入りでええやん、バロンドール殿堂入りって肩書きでも相当嬉しいやろうし。 バロンドール目指してる選手のモチベーション的にももっと新しい世代にチャンス与えないと。・さすがにメッシもロナウドもバロンドールは殿堂入りでいいよ 多くの人がスーパーだと認めてるだろうし他の人が受賞してるところを見たい
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・もうメッシはバロンドール殿堂入りさせろw 他の選手の信者が毎年文句言うぞw
・またかよ・・・、って思ったけどそういえばコパ・アメリカ勝ったんだったな。ベストジーニストみたいに5回受賞したら殿堂入りにしたほうがいいと思う、けど、メッシとCR7みたいな選手はもう出ないとも思う。
バロンドールに殿堂入りを導入するメリット・デメリット
直近13回のバロンドールのうち12回をメッシとクリスティアーノ・ロナウドが分け合っている状況を考えると、殿堂入り導入の声が高まるのも理解できます。
ではもしバロンドールに殿堂入りシステムが導入されたらどうなるのでしょうか?当然、メッシ、クリスティアーノ・ロナウド両選手は殿堂入りとなり選出候補から外れることになるのでしょうが、その場合のメリットとデメリットを考えてみましょう。
バロンドール殿堂入り導入のメリットは受賞選手の偏りが防げること
バロンドールに殿堂入りのシステムが導入された場合に考えられるメリットは次のようなことではないでしょうか。
- 受賞選手の極端な偏りがなくなる
- より多くの選手にバロンドール獲得のチャンスが与えられる
- バロンドール獲得へ向けて選手のモチベーションが上がる
- ”バロンドール殿堂入り”というさらに上の肩書が生まれる
圧倒的な選手を殿堂入りさせることで、より多くの選手がバロンドールを獲得できるのは事実でしょう。
その証拠に、たとえば2008年以降に3度バロンドールを受賞した選手が殿堂入りしていたと仮定すると、メッシ、クリスティアーノ・ロナウド両選手が殿堂入り後にバロンドールを獲得したであろう選手は、このようになります。
マヌエル・ノイアー(2014)/ネイマール(2015)/アントワーヌ・グリーズマン(2016)/ネイマール(2017)/ルカ・モドリッチ(2018)/フィルジル・ファン・ダイク(2019)/ロベルト・レヴァンドフスキ(2021)
これだけいろいろな選手がバロンドールを獲得していたんですね。獲得選手を見ただけで、「あぁ、あの時代か」と分かるのも面白いですし、GKのノイアーやDFのファン・ダイクといった守備的選手が度々選出されているのも興味深いです。
バロンドール殿堂入り導入のデメリットは賞の価値低下の懸念
つづいてはバロンドール殿堂入りシステム導入におけるデメリットを考えてみましょう。
- 最も活躍した選手ではなくても最優秀選手に選ばれる可能性がある
- ”真”のバロンドールでなくなると、バロンドール自体の価値が下がる
シーズン中に誰もが認める圧倒的な活躍をした選手がすでにバロンドール殿堂入りを果たしていると、そのシーズンは別の選手がバロンドールを獲得するわけですが、そうなると多くのは「本当は〇〇(殿堂入りの選手)が一番だったよね」「でも〇〇は殿堂入りしているからバロンドールが取れないのは仕方ないよね」と言うかと思います。
メッシ、ロナウドの2強時代では、実質3位の活躍をした選手がバロンドールとして選ばれるということもあるわけです。
となるとバロンドールは現役選手NO1を正当に決める賞ではなくなります。するとバロンドールの権威自体が落ちることが予想されます。
もちろん殿堂入り選手を除外してもバロンドールに選ばれる事自体は選手にとって非常に名誉なことでしょう。ですが、メッシ、ロナウドのような圧倒的な存在がいる中で1位を掴み取る方が選手にとっての喜びは大きいのではないでしょうか。
個人的にはバロンドール殿堂入りは不要かなと思います。メッシとロナウドが異次元なのは事実ですが、二人とも存在しているだけでバロンドールを獲ることはできませんよね。レベルが異次元だからこそ、両選手は他の選手と比較して求められる水準が高く、とてつもないプレッシャーも掛かっているはずです。そんななかで自らを律し、鍛錬を重ねて安定的に成績を残しつづけることがどれだけ大変なことなのか想像もできません。しかもバロンドールを獲るにはメッシとロナウドがお互い(ライバル)を超える活躍をしなければならないわけです。
そう考えると当たり前のようにバロンドールに選ばれる2選手こそが最も苦労してバロンドールを獲得しているとも考えられます。だからこそ、バロンドールは殿堂入りや名誉枠などを設けずに真の最優秀選手が選ばれてほしいと願うわけですが、皆さんはどう思いますか?
というか、そもそも、メッシとロナウドの時代だけが異例中の異例だっただけで、二人の時代が終われば再びいろいろな選手がバロンドールを手にする時代が来ると思います。そして将来、リアルタイムでメッシとロナウドを知らない世代に両選手の偉大さを語り継ぐためにも、2強独占のバロンドールも悪くないのではないでしょうか。
2強時代を崩したモドリッチもスゴイ!