「フィギュアスケート大国アメリカ」・・・それはもう過去の話なのでしょうか?
アメリカにはネイサン・チェンという世界王者がいるにも関わらずフィギュアスケートの人気が低いそうです。
いったいそれは何故なのでしょうか?再びアメリカでフィギュアスケートに注目が集まる日が来るのでしょうか?
フィギュアスケート人気が下火のアメリカ
アメリカというとフィギュアスケート大国のイメージを持つ人も多いのではないでしょうか?
かつてはクリスティーヌ・ヤマグチやタラ・リピンスキーといったオリンピック金メダリストや、ミシェル・クワンといった超スター選手を輩出してきましたし、ナンシー・ケリガンVSトーニャ・ハーディングの戦いは後に映画化されるほど、国民を夢中にしました。
しかし現在はどうでしょう?
確かに世界的に見れば、アメリカはフィギュアスケートが盛んな国の一つであると言えます。
ですが、テレビ中継もほとんど行われず、選手の名前も知られていないマイナー競技になってしまったようです。
最近では、ネイサン・チェン選手が2年連続世界王者に輝くという快挙を成し遂げているのにも関わらず寂しい現状ですよね。
フィギュアスケートの人気は90年代がピーク 2000年代から衰え始める
Embed from Getty Imagesミシェル・クワン選手らが活躍していた1990年代はアメリカのフィギュアスケート黄金期でした。
テレビで試合中継をすれば視聴率が稼げたし、フィギュアスケート人気にあやかって、アメリカ各地に次々とスケートリンクが建設されていきました。
しかし、2000年代になるとフィギュアスケート人気は徐々に衰退していき、現在は寂しい状態に。
とはいえ2010年代にもアシュリー・ワグナー選手やグレイシー・ゴールド選手といった華があって世界大会でもメダルを狙える女子選手はいましたし、男子シングルではエヴァン・ライサチェク選手が、アイスダンスではメリル・デイヴィス&チャーリー・ホワイトペアが金メダルを獲得しています。
それなのになぜ人気が落ちてしまったのでしょう。
アメリカでフィギュアスケートの人気がない背景
今でも有能な選手が多いアメリカですが、フィギュアスケート人気が衰えたのには様々な背景がありました。
アメリカ人にとってのフィギュアスケート=女子シングル
アメリカ国民たちが愛していたフィギュアスケートは主に女子シングルでした。
それは現在でも変わりません。
男子やペア競技の選手がオリンピックでメダルを取ろうが人気が高まらないのは、アメリカ人のこの考えが根強いからであると言えるでしょう。
メダルはオリンピックじゃないとダメ!
Embed from Getty Imagesアメリカ人はオリンピックのメダル争いには注目するけれど、その他の国際大会にはあまり興味がないようです。
近年ではアシュリー・ワグナー選手が世界選手権で2位になりました。
それに、平昌オリンピックでは長洲未来選手がトリプルアクセルを決めました。
でもそれだけでは多くのアメリカ人の心を掴むことはできません。
いくら世界TOP3に入っても、オリンピックで歴史に残る演技をしてもダメなんです。
オリンピックでメダルを取らないと、金メダル候補にならないと注目を集めることはないでしょう。
グランプリシリーズなどはもってのほかのようです。
注目されない競技は放送されない→さらにファンが減少
アメリカ国民が認める女子スター選手が不在となって以降、アメリカではフィギュアスケートの試合の中継がほとんど行われなくなったようです。
現在フィギュアスケートの試合をテレビで視聴しようとすると、生中継であれば有料スポーツチャンネルに加入している必要があり、録画放送なら数日~数週間後の放送を見るしかないようです。
これではファンが減ってしまっても無理ありませんよね。
スポーツ大国アメリカならではの事情も
アメリカには人気スポーツがいくつもあります。
NBA(バスケットボール)、NFL(アメフト)、MLB(野球)、そしてX GAMES(エクストリームスポーツ)などなど。
そういった人気スポーツは当然お金を生み出すことができるので、放送局はそれらのスポーツばかりを放送しているようです。
ビジネスですから利益優先なのは当然ですが、
これにより若者たちは人気スポーツにしか興味関心がなくなり、
オリンピックすら見られなくなってきているようです。
日本のフィギュアスケート中継も録画放送が多いし、特定選手に偏った放送スケジュールが組まれていますが、それでも大きな国際試合なら同日(または翌日)中にテレビ放送してくれるだけ恵まれていますよね。
フィギュアスケートの競技者が減っている理由は?
フィギュアスケートの人気が落ちた背景は以上の通りですが、競技人口も減っています。
人気がなくなれば競技人口が減るのはもちろんですが、それに加えてアメリカにはフィギュアスケートを始めづらい環境があるようです。
リンクの減少
その1つ目がリンクが減少しているということ。
フィギュアスケート人気と比例するように、全米各地にスケートリンクが建設されたそうですが、人気も低迷期に入るとスケートリンクも経営が困難となり、閉鎖が相次ぎました。
そのため、フィギュアスケートに興味を持ったとしても、いざ習おうとしても近くにリンクがない。もしくは通うのにものすごく時間がかかるという場合も少なくないそうです。
コストの問題
これは日本も同じですが、フィギュアスケートを始めると指導代、衣装代、振付代、遠征費などなど大きな出費が伴います。
ロシアのように才能がある子に安価で教えるというシステムはアメリカにもありません。
有名選手になってスポンサーから援助を受けられるのもほんの一握りの選手だけです。
そして、お金の問題にはプロになってからも悩まされます。
日本ではある程度知名度のある選手たちは引退後にプロスケーターになる場合が多いですよね。
アメリカにもプロスケーターという選択肢はあるのですが、実際プロになっても肝心のアイスショーの数が減少しているので、国内で安定した収入が保証されていません。
学問との両立の難しさ
アメリカの選手たちがときにスケートよりも学業を優先する背景には、そういう事情もあるのかもしれません。
また、学業つながりで言いますと、アメリカには生徒の不登校に関する厳しい法律があるそうで、海外遠征などで学校にいけない学生でも特に配慮してもらえないんだとか。
こういった事情が重なり、仮にフィギュアスケートをやりたいと思っても、現実的にやれる環境にある子は限られてしまうようです。
ネイサン・チェンの知名度低すぎ!スター選手がいるのにフィギュア人気が高まらない理由は?
現在フィギュア界でもトップクラスのスターの一人がネイサン・チェン選手ですよね。
日本ではフィギュアスケートにそこまで詳しくない人でも彼の存在を知っている人もそこそこいます。
彼はアメリカ人が唯一注目するオリンピックで人類史上初4種6本の4回転を跳びましたし、現在の世界王者でもあります。
また男子シングルいや、フィギュアスケート界イチのスーパースター羽生結弦選手に唯一勝てる選手でもあり、北京オリンピック金メダルの有力候補です。
関連:羽生結弦に勝てるネイサン・チェンはどこが凄い?強い理由とは?
そんなネイサン・チェン選手ですが、アメリカ人のスケオタさん曰く、彼のアメリカでの知名度は2%あれば良い方くらいに低いんですって。・・・びっくり。
その理由は上述のように、彼が女子選手ではないこと、オリンピックメダリストではないことにあります。
さらに付け加えると、男子シングルのフィギュアスケーターを「ゲイ」だとみなしたり、からかうアメリカ人は一定数いるそうです。
さらに、アジア系アメリカ人を差別する人もいたり、差別まではしなくても顔を見分けられないという人もいたり・・・。
そしてネイサン・チェン選手は聡明でクールな性格の持ち主ですが、アメリカ人に好まれるような外交的なキャラクターではないことも彼自身がスターになれない理由であると分析しているファンもいるようです。
今後アメリカでフィギュアスケート人気の再来はあるのか?
アメリカでのフィギュアスケートの置かれている厳しい現実について語ってきましたが、今後、フィギュアスケート人気が盛り返すことはあるのでしょうか?
やはりものすごいスター選手が現れれば人気は取り戻してくるのではないかと思います。
フィギュア人気回復のキーマンたち
Embed from Getty Images近年中というところですと、人気回復のキーマンの一人目はネイサン・チェン選手。
先程の内容と矛盾しているよ?と感じられるかもしれませんが、彼がオリンピック金メダルを取ることでスターになる可能性は十分にあると思います。
男子人気のないフィギュアスケートではあるものの、もし次の北京でネイサン・チェン選手が金メダルを取るとすればおそらくスーパースターの羽生選手を破ることになるでしょう(日本人なのにこんなこと書いてスミマセン。仮定の話なので…)。
その戦いはフィギュアスケート史上もっともハイレベルでドラマチックな戦いになるはずです。
そうなればさすがのメディアもこぞって取り上げるでしょうし、ネイサン・チェン選手ファンも増えるのではないでしょうか。
そしてそれ以上に期待したいのは、アリサ・リウ選手ですね。
笑顔がかわいい愛くるしいキャラクターですし、競合ロシアとも渡り合えるポテンシャルのある選手です。
彼女がオリンピックの時期に金メダルを狙えるポジションにいれば、国民の関心はかなり高まるのではないでしょうか?
ただこれに関してはまだ先の話なのでどうなるかは未知数ですけど。
アメリカはスポーツ大国だからこそフィギュアスケート人気が低迷している。
なんとも皮肉ですが、大きなインパクトを残す出来事(結果)があれば、それを受け入れる土壌のある国です。選手たちにはぜひぜひがんばって頂きたい。
ちなみにこれって、日本も他人事じゃないですよね。
日本の黄金期は男子は羽生選手、女子は紀平選手の人気で維持されていますが、それも永遠ではありません。
また世界をあっと言わせるようなスター選手が現れないかな…。